『 悲しみよ こんにちは 』

立夏を迎え日中は暑いくらいですが
台風6号の進路も心配です
まだ5月なのに
季節が足早に進んでおります




さて、久しぶりにこのカテゴリーです
ここ最近は生活にゆとりが生まれ
自然に本を読む時間が増えました
活字に飢えていたのか、よく読んでいます
文庫本も久しぶりに購入
選んだのは
サガン『 悲しみよ こんにちは 』でした
本当に今更ですが
ようやく読むことができました

今から半世紀以上も前
1954年、わずか18歳のサガンが出版社に作品を送ってきて、なんの宣伝もなしに出版された本なのだそうです

外国の翻訳作品は苦手なものが多いのですが、
フランスとインドの言語や文章は
日本語の繊細さ、丁寧さと似ているのか
とてもきめ細かく読みやすい
訳者の方(今回は平成21年に現代訳をされた河野万里子さんによるもの)
の相性もあるのでしょうが
この作品も非常に読みやすく
すっと中に入っていきました


読みながら何度も唸りました
息づかいが伝わるようで
細部に渡り世界がリアル
生身の人間の生々しい感情描写に惹きつけられる
特に主人公セシルの心に残酷さが生まれる瞬間が見事だなと思いました

人の心
人を想う愛
愛が人との関係性の中
複雑に姿を変える
自己愛、親子愛、恋愛が
嫉妬、妬み、怒りへ
人の心の闇
人の心の残酷さが克明で
全ての人物の感情が生々しい

『 夢想や欲望や想像から引き出した 』

『 私の人生には、幸いにしてこんな陰惨な話はなかった 』

と本人
この全てが18歳の少女の想像力から生まれた事に驚くばかりです

フランスの気ままなきらびやかな世界
ここは架空の世界ではあるけれど
悲しみの結末が苦しい
誰しもあるのではないか
自らの心が招いた悲しみの結末
我に返って見える己の恐ろしくもある負の感情
人は悲しみを負う
そして内包し生きてゆく


悲しみよ こんにちは
あまりにも有名なこの題名
( 原題はポール・エリュアールの詩の一節から取られているそうです )
この邦題( こちらは朝吹登水子訳 )がまた素晴らしい




小池百合子氏の解説もよかった
当時のサガンの世界へ羨望に近い眼差しや
学生運動に懸けた若者たちの息づかいまで伝わるようでした

長く読まれる名作の一つ
まだまだ他にも沢山あるのです

これからまたいろいろ読んでいければと思い本を閉じました






Music & Book & Movie - -
『 アメリカンスナイパー 』

無音のエンドロールを最後まで観た

灯りが戻り、ようやく立ち上がる
残ったコーヒーが重たく感じられた
いつもなら直ぐに飲み終わる量なのに

激しい戦場の戦闘のシーン
異常な緊張感に呼吸も止まり固まっていた時間が多かった

劇場を出て、外に太陽の光を見れた時
あぁ、平和なんだなと心から思った
そこにいる人々は談笑し穏やかな表情
いつもの景色が違って見える

帰りの運転中もそう
車は安全に行き交い
下校中の子供達は横断歩道をはしゃぎながら走って渡っている
そんな何気ない日常の光景
本当に安全なんだなと思い知らされる

実話だということが重みを与える
情緒的感傷的気分にはなり得ない
世界にはこのような現実、事実がある
それを知った
知ることしかできないけれど、
今在るこの目の前の平和な現実を
初めて心からありがたいと思った
安全が保障された世界に生きていること
己の幸せをきちんと感じ感謝せずにおれなくなった
こんな実感にエゴを感じ罪悪感



私たち日本人にとってニュースの中の出来事
その渦中で戦う人々がいる
信じる正義のため
例えそれは志願したことだとはいえ
そこは生死を賭けた戦場


−戦争で影響を受けないものはいない
−心が蝕まれていく

彼の妻が涙ながらに言った言葉がその家族の現実なのだ
そして突然に皮肉な最期を迎える彼
1974−2013
そう年齢が変わらないことを最後に知りまた茫然となった


アメリカを守るため
家族や仲間を守るため
今回もそんなセリフが何度も出てきた
彼らは愛する国家や家族、仲間を守るという愛、正義のもと自らの命を懸けている
守るための攻撃
そんな大義

愛する家族、子供を持つ人も、
戦場では女性や子供も撃ってしまう
人として心の痛みを持っても、そこが戦場であれば周囲からは賞賛される
仲間の為に、敵を撃つ
正義のために、人を殺す

この矛盾や罪悪の念から逃れることができず帰還しPTSDで苦しんでいる兵が多いということも事実


何故人は戦うのだろう
昔から戦いは続いている
大袈裟だが、戦いによって国は変化し歴史も動いてきたのかもしれない
現代の日本でもいじめや事件はない日はない
人の本能の部分に組み込まれた自己防衛の行為が攻撃なのか
愛憎
愛と憎しみは一体なのか
こちらを向けば愛、
背中側には憎しみを見せる
愛の為に憎しみを抱き、戦う
敵、味方、共にそうだ
真逆の正義や大義があり
それを守るために戦う
認め合うことはできないのか
分かち合うことはできないのか

戦争とはなんなのだろう



私は現実を知ることしかできない

今はこう重たく受けとめているけれど、
少しずつこの平和な穏やかな日常が当たり前になり、それすら薄れている
こんな軽薄な自分に罪悪感



だけど
観なければ感じる事はなかった
観て初めて気付いた事があった

そこがいい映画だとおもう
イーストウッド監督の映画はいつも深い
根源的な問いを投げかける


Music & Book & Movie - -
『 home 』

私はそれを迷わず手にした

旅先で立ち寄った雑貨店
入り口から中へ入ると
カウンター内の店員と派手な髪型のお客さんが楽しげに会話していた

商品がライトに照らされ明るく光る
多くのモノ
少し気圧される空気感

さてと、と一段上がって右の角を曲がってすぐ
少し上の棚
立てかけられた一枚のCDが目に留まる
薄い淡い水色の紙のジャケット

小さな青い文字で

home ー Hideyuki Hashimoto

それを迷わず手にし
それだけを買い求めた



《 朝が来て、夜へと還っていく…

瀬戸内海に浮かぶ小さな島の小学校に眠っていた、一台のアップライト・ピアノ。
その優しい音色がHideyuki Hashimotoの指先によって、静かに目を覚ます…。
窓を開放し、鳥の声をはじめ周囲の自然音など島の空気と共に紡いだ24の小曲集 》


ぼわんと籠もりがちな音がゆっくり柔らかく響いてくる
オルゴールのようでもあって
ちょっと切なげで
心の奥にきゅんとくる音色
懐かしさに似たメロディー

自然をタイトルとした曲が多く
聴いていると旅先の映像が脳裏に浮かんでくる

きらきらと穏やかに輝く瀬戸内の海


一期一会
人や場所、作品との出会いがこの音色によってより優しい思い出となる

旅は非日常
新しい出会いに溢れている

だけど日常だってそうかもしれない
本当はいつも初めて
その日その時その瞬間
本当はいつも新しい

そして時は有限だ
終わりは来るもの
それを忘れずにいよう
更に日常が、今が愛おしくなる



ぼわんとした柔らかな音色に包まれていると
何気ない日常の幸せや
今のありがたさを
感じることができる


『 home 』
心穏やかにしてくれる一枚です




Music & Book & Movie - -
『 めがね 』
先週の日曜日午後
ぽっかり時間が空きました
休みの日の午後の時間に一人
とても久しぶりだったように感じました

そしてふと
『 めがね 』を聴こう
と思いました

めがねの柔らかいチェロのメロディーが思い浮かび
頭の中を巡る
早速音楽チェンジ


ゆったりと流れる中低音のチェロの音色が
風や凪の日の波音のようで
心にじぃんと深く響いてくる

この映画を見たのはもう何年も前
映画は2007年公開だったようです
見終わって、究極の癒しの映画だなぁ〜
と想ったのを今でも憶えています

特に音楽が映画を優しく包み込み心に残りました
サントラをすぐに購入
今でもたまに聴きたくなるのです

空、海、島、犬、夕日…

流れる時間のゆったり感
人や人と人を包む空気感
海をぼんやり眺める時間
美味しそうな食事や
カキ氷を食べるひと時
海辺でのメルシー体操
犬がカメラを横切るところ

映画のワンシーンも思い出し
ちょっとくすりとしてしまう

梅雨の重たい空気もふわりと流れてゆきました







Music & Book & Movie - -
『 Before Midnight 』
重ための雲に覆われた空
さっきまでは雨風も強くやや荒れた空模様
今は落ち着きを取り戻し静かな夕刻です


久しぶりによい映画を観てきました

シリーズ最終章『 Before Midnight 』

18年前の『 ビフォア サンライズ 恋人までのディスタンス 』
9年前の『 ビフォア サンセット 』

監督と主役の二人で生み出される脚本は実にリアル
共感しながら観れるワクワクキュンキュンする映画です

会話だけで構成されるシリーズ
今回もふたりのトークは健在ですが
9年の時を経た姿にはリアルに年月を感じました

同じ時を経過して作られる作品なんて他にはありません
そこもすごいところ

セリフが余りにもリアルなので、自分とダブらせる方も多くいらっしゃるのではないでしょうか
知っている知っていないで、その共感度も大違いです

まさにラブストーリー
ロマンチックな出会いの一作目
不安な女心を如実に表してくれた再会の二作目
その後の現実の生活をふまえた今回の三作目

ふたりの想いの間に、実生活や現実の問題が生じる
好きの気持ちの間に沸き上がる感情の起伏
共に生活していると、近すぎて見えたり見えなかったりするものがふえてくるのでしょうか

いまだ到達できぬところ故
今回は共感するより今後のお勉強的感じとなりましたが、
少し情景描写や大きな場面の切り替え、他のメンバーとの会話などもあり映画的要素が増えた気がしました

ふたりの会話から
現在の生活、9年間の歩み、その間の関係性と感情の変化などを想像するのはとても楽しかった
映画を観終わって、一緒に観た既婚の友達といろいろ話せましたよ
彼女はやはり共感しておりました〜

上映されている映画館も少なく
上映期間も短いのでスクリーンでこの映画を観れたのは本当に貴重です



全ては過ぎゆく
そばにいても関係性は変わり続ける
諸行無常


「 gone… 」

「 完璧ではないけど本物の愛 」

このセリフがとてもよかった




しかしながら、イーサンホークの変わり様にはびっくり
『 今を生きる 』のあの初々しい学生服姿がキラキラ眩しく思い出されます



あららっ
同じだけ年齢重ねて、人のことばかりいってはおれませんでした…



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